多くの赤ちゃんが10倍粥からスタートする離乳食。
はじめての食事に、時にに不思議な顔をしたり、時ににっこり笑っておかわりを要求してくれたり、時にびっくりしたような顔をしたり、スプーンの中身が少しずつ赤ちゃんの口に取り込まれていく様子を見ていると、何とも感慨深い気持ちになったのを思い出します。
10倍粥が食べられたら次はお野菜が始まります。
記念すべき一つ目のお野菜は何にしましょう?
家にある人参にしておこうか?それとも甘いさつまいも?いやいや、鉄分やカルシウム豊富なほうれん草にチャレンジしちゃいます??
離乳食の初期は裏ごしやペースト状につぶすなど少し手間がかかります。
せっかく手間暇かけて準備するなら赤ちゃんにとってベストな食材を選びたいですよね。
私はもともと漢方を扱う薬剤師をしながら薬膳をお伝えする講師をしていたので食材の選び方にはこだわりがあって、質の良いお野菜を選ぶ、ということ以外に赤ちゃんのために必要な効能を持つもの食材を選ぶ!というところをしっかり意識していました。
今回はそんな離乳食初期に是非取り入れてほしいお野菜をBABY薬膳の観点からご紹介します!
離乳食初期の野菜のおすすめは?選ぶための3つポイント
離乳食の初期は新しい食材にどんどんチャレンジしていく!というよりかは、一歩一歩食べるということに慣れていく時期です。
ですから今後の食事を楽しんでもらうためのベストな選択をしていきたいですよね。そこで選ぶポイントまとめてみました。
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甘味を感じやすいものを選ぶ
甘味は子供の最も好む味といわれています。
あなたは母乳を舐めてみたことありますか?
母乳には乳糖やオリゴ糖などの糖類が含まれているのでほのかな甘みがあります。
ちなみに私が舐めてみた感想は糀でつくった甘酒をお水で何十倍にもうすめたようなほのかなやさしい甘みという感じでした。
赤ちゃんはそんなやさしい甘みが好きなのです。
薬膳的では味にも効能があるといわれていて、中でも甘い味は胃腸を元気にする味、ほっこりと緩める味、元気を補う味といわれています。
ちなみにここでいう甘い味というのは、お砂糖などの甘味ではなく、食材のもつでんぷん質から感じるやさしい甘味のことを指します。
でんぷん質が多いのが根菜類。さつまいもやかぼちゃなどのしっかりと甘みが感じられるものでなくても赤ちゃんにはしっかり甘みが伝わるので、甘みの強い品種を選ばなくても大丈夫ですよ。 -
トロトロにしやすいものを選ぶ
離乳食の初期の食べ物の固さはだいたいヨーグルトくらいのトロトロ感を目指します。
食材の効能を重視して選んでいた私は離乳食の初期の序盤でキャベツをチョイスしたのですが、
何気なく食べていると気づかなかった固めの繊維が結構クセモノで裏ごしにめちゃくちゃ苦労した思い出があります。ちなみにこれがそのキャベツ。調子に乗ってたくさん茹でたら終わりが見えずくじけそうでした。中の方を使ったので色も黄色っぽくて残念(笑)キャベツは有名な胃薬の主成分になっているキャベジン(ビタミンU)というビタミンが含まれ、胃腸にやさしいとてもいい薬効を持っているので、赤ちゃんにとってはうれしい食材なのですが、離乳食の初期から慣れない調理が増えると心が折れそうになるので、まずは簡単にトロトロになるものから進めていくのがおススメです。
具体的にはすりおろすときにしっかり安定して握って調理がしやすい人参や大根や、軟らかくなるまで蒸したりゆでたりするとかんたんに裏ごしができるさつまいもやかぼちゃなどはありがたい食材でした。
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ここまでを見ていくと、求めている効能があって、調理が楽なカボチャやジャガイモは早めに登場させたいな!という感じになってきますよね。
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気を補う効能を持つ食材を選ぶ
消化吸収の機能が未熟な赤ちゃんが、食べ物からエネルギーを吸収する、ということを考えると、栄養学的にも、薬膳的にもエネルギーになりやすいものを選びたいところです。
薬膳の考え方では身体のエネルギーを「気」といい、気を補う「補気」という効能を持つ食材をメインでチョイスしていくのがおススメです。
では、気を補う食材ってどんなもの?といいますと、そこから芽が出るエネルギーをたくさん持っている芋類や豆類、種実類が当てはまります。
この中で離乳食初期に扱いやすいのはじゃがいもやサツマイモなどの芋類、そしてかぼちゃやリンゴなどの実などですね。
(豆類はタンパク質の分類になるので、初期の後半か、中期に進めましょう。)
そしてもう一つおすすめなのが人参です。
人参は根っこにあたるのですが、ニンジンの頭の部分を水につけておくとそこから人参の葉がどんどん出てきます。つまりそこから芽が出るエネルギー(=気)をしっかり持っているということなんですよね。
さらに人参には気を補う効能以外に、消化不良の改善という効能を持ち、消化が未熟な赤ちゃんの消化力を補完してくれるという意味ではかなりポイントが高い食材といえます。
おすすめの理由はもう一つあって、ニンジンにはわずかながらうまみ成分のグルタミン酸が含まれるところです。このグルタミン酸、実は母乳にも含まれています。
母乳と同じうまみ成分が含まれているという点からも、親和性が高いので赤ちゃんがスムーズに受け入れてくれるはず!実際、私の第一歩のお野菜は人参でした。もし私に第二子が授かったら、その子も必ず1つ目の野菜は人参かな!と思っています。
ちなみに人参は柔らかくなるまで蒸してつぶしていました。ゆでたものよりうまみや甘味がぎゅっと凝縮しておいしくなるのでおススメです!
こんな感じで1つ目のお野菜が人参に決まったところで(笑)次はどうしましょう?
ここからは実際の離乳食スケジュールも意識しながら進め方をご紹介します。
離乳食初期の野菜の進め方
ここで離乳食初期の食事のスケジュールを確認してみましょう。
〇1週目
10倍粥のみ
1日目は重湯を1口、2日目は10倍粥1口にして、その後小さじ1~4さじまで増やしていく。
ちなみに私は開始まえに数日湯冷ましを1口だけ与えて、スプーンで何かを口にする、というのを練習してみました。
離乳食の本などを見ると〇さじと書いてあるんですが、離乳食用のスプーンと小さじを混同して初めすごく混乱したのを覚えています。
離乳食の本のキホンは小さじです。小さじ1の量を離乳食用のスプーンで2~3口に分けて食べるイメージなので気を付けてくださいね。
〇2週目
10倍粥3~4さじ+1つ目のお野菜(人参)
1、2日目:10倍粥3さじ+野菜1さじ
3、4日目:10倍粥4さじ+野菜1さじ
5~7日目:10倍粥4さじ+野菜2さじ
という感じにしました。このときは野菜とお粥を別々にしたり、すこしまぜたりして変化をつけるといいですね。
〇3・4週目
10倍粥4~5さじ+お野菜1~2さじ+タンパク質(豆腐など)1さじ
野菜は3~4日のサイクルで新しいものにチャレンジしていました。
食べられるお野菜が増えていくと、野菜を混ぜ込んだ野菜がゆとペーストで食べてもらう野菜を準備していました。
タンパク質はあまり量を増やさず、アレルギーが出ないかどうかの確認をしながら、すこし与えるというイメージでした。
〇5~8週目→二回食開始
7倍粥6さじ(=大さじ2)+お野菜トータルで3~4さじ(小さじ1×3種くらい)+時々タンパク質1~2さじ
二回食が始まってくると準備が2回になって大変ですよね。
でもイメージは1回食の1.5倍くらいの量を二回に分けて食べる感じです。まだ満腹中枢が未発達な赤ちゃんはどんどんあげてしまうといきなり全部リバース!なんていうこともあるので気を付けて。
離乳食の初期も後半になってくると、葉物野菜や加熱した果物のバリエーションが増えていきます。
ここまでくると、あれもこれも!とついついバリエーションを増やしていきたくなりますが、赤ちゃんも食べたい気分にむらがあるので頑張って作りたい欲を無残にへし折られることもしばしば(笑)
1回分が食べられてたらいいか!と気楽に構えて進めていきましょう!
おススメの食材や進め方がわかったところで、あなたもこんな流れで食べさせてみようかな、とイメージが膨らんできましたよね?そろそろ離乳食の食器や調理器具もポチポチし始めましたか??
そこであなたにはもう一歩食材選びのスキルをパワーアップしていただきたいと思っています!
パワーアップの内容は続きをご覧ください!!
野菜の選び方にこだわる!季節別オススメ食材3選
薬膳の考え方では「どんな食材にも効能がある」と考え、食事を食べる人の体調や体質に合わせてその効能をマッチングさせていきます。怪しげな漢方食材を使うことが薬膳、というわけではないんです。
赤ちゃんは消化吸収機能(中医学の考え方ではこれを脾の機能といいます)が未熟。それを補いながらパワーアップさせるには前述の気を補う食材を意識して食材を選んでいくのが赤ちゃんの薬膳になるわけなんですが、この時にもう一つ意識したいのが季節です。
一般的な離乳食の本ではつぶしやすい食材、消化に良い食材はこんなのがありますよ、と紹介されていますが、BABY薬膳ではもう一歩踏み込んで、季節=旬を取り入れていただきたいと思っています。
旬のお野菜にはその季節に起こりがちなトラブルを解消してくれる効能がたくさん詰まっています。
スーパーでは旬に関係なく年中様々なお野菜が手に入りますが、やはり旬のお野菜はハウス栽培のお野菜よりパワーがあります。
そんな季節ごとにおすすめの食材を、離乳食初期にも扱いやすい物だけを厳選してご紹介します。
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春(3~5月)に離乳食を開始する場合
自然界では様々な植物が芽生え、成長する季節はそのエネルギーを取り入れて巡りの良い身体をつくるのをサポートする食材がおススメです。
①人参
オールシーズンおすすめですが、ニンジンは実はセリ科。セリといえば独特の香りが特徴ですよね。そのセリの仲間なので人参も香りのある食材とみなします。
香りのよい食材は巡りを良くしますが、香味野菜は赤ちゃんには刺激が強い中、ニンジンは甘みもあって食べやすい食材。これは外せませんね!ニンジンについてはこちらもご覧ください!
離乳食のにんじん!食べない子に試してほしい調理法とは?あなたのお子さんはにんじんを食べてくれますか? にんじんには離乳食期の赤ちゃんに取り入れてほしい栄養素がたくさん含まれています。 でも、離乳食期の赤ちゃんに食べさせてもなんだかうんちでそのまま出てくるし、 嫌がって食べてくれないし・・・とい...②アスパラガス
アスパラはアスパラギン酸というよく栄養ドリンクに含まれているパワーチャージ成分が含まれています。芽を出したばかりの”芽吹き食材”なので春にぴったり。穂先の部分をゆでてつぶし、ゆで汁とお粥で伸ばしてみてください。アスパラは水溶性のうまみ成分が含まれるのでゆで汁で伸ばすのがポイントです。③ブロッコリー
ブロッコリーは薬膳的には補五臓といって体全体のパワーを底上げしてくれる食材です。まだ様々な機能が未熟な赤ちゃんにはうれしい効能ですね。
さらに、栄養学的にはタンパク質が含まれている野菜です。
動物性のタンパク質はまだ負担が大きいのでチョイスが限られてくる離乳食初期にタンパク質を負担なく補えるという点ではオールシーズンおすすめですが、春のブロッコリーは甘みが強くておいしいので是非取り入れてみましょう。 -
夏(6~8月)に離乳食を開始する場合
蒸し暑い夏の季節は大人でも食欲が落ちる季節。食べ物も傷みやすかったり、衛生管理にも気を遣うこの季節に離乳食を開始するのはできれば避けたいところですが、どうしても始める場合は身体から湿気を追い出したり、暑さをクールダウンさせる効能を持つ食材をうまく使ってみましょう。
夏に始めた私の経験はこちらも参考に!①トマト
トマトは夏の胃薬といわれ、胃腸の調子を整え、夏の暑さで身体にこもった熱をクールダウンしてくれる食材です。
赤ちゃんの身体は「純陽」「陽のかたまり」といわれていて、身体に熱がたくさん詰まっている状態です。確かに赤ちゃんは平熱が37度くらいあってホカホカですよね。
そんな赤ちゃんが夏の暑さにさらされると身体の熱がこもりすぎて大変。そんな時に冷たいものを飲ますのではなく、食材の効能をうまく活用してクールダウンしてバランスを取っていきます。
ちなみに夏に開始した息子の2つ目の野菜はトマトでした!
トマトは人参よりもグルタミン酸が多く含まれていてうまみの宝庫!
しっかりに詰めておくとまだ調味料を使えない離乳食の初期~中期の調味料代わりにもなります。
食べにくい食材やちょっと苦手そうな食材にトマトを合わせると何でも食べてくれたので初めの頃は本当に重宝しました。トマトについてはこちらもご覧ください!
離乳食のトマト!缶やジュース活用の落とし穴!あなたはトマトお好きですか? 私は暖かい季節になってくるとトマトが欠かせなくなります。 私は妊娠中、つわりでトマトとイチゴしか食べられない時期があって、トマトには本当にお世話になってきました。 このトマト、彩りもきれいでうまみもたっぷり含ま...②モロヘイヤ
葉物野菜の代表といえばほうれん草ですが、ほうれん草はシュウ酸が含まれていてしっかりあく抜きをしたいお野菜なので、私のおすすめは断然モロヘイヤです。
モロヘイヤはほうれん草の5倍ほどのカロテンを含んでいて、(母乳が減ってくると何かと指摘される)鉄分の補給にも有難い食材です。さらにゆでると出てくるネバネバ成分が消化を助けてくれます。
ネバネバ食材はとろみづけにもつかえるのでのど越しもよく、苦味もほぼないのでとても重宝します。
茎の部分は固いので葉っぱだけを摘み取ってゆでてくださいね。③とうもろこし
とうもろこしはゆでてつぶして薄皮を除くのが少し面倒ですが、体の水はけを良くして、お腹の調子を整えてくれる食材です。
初期の頃は家でつくるとどうしても粒粒が滑らかにならず、どうしても取り入れたくて市販のフリーズドライなども活用していました。
やさしい甘みが子供好みでもあるので湿気が気になる季節はぜひ取り入れてみてくださいね。 -
秋(9~11月)に離乳食を開始する場合
秋は乾燥のシーズン。みずみずしく見える赤ちゃんのお肌もこまめな保湿を怠るとカサカサしたりあれたりしやすくなります。
秋は体の潤いをチャージしてくれる食材を選びましょう。①かぶ
かぶはしっかりゆでるとトロトロになって甘みも増します。柔らかくなるという点では大根よりはるかに優秀です。
さらにかぶもブロッコリーと同じく「補五臓」という効能を持ちます。体の潤いをチャージしてパワーも底上げしてくれるかぶは秋には外せない食材です!
つぶすと意外と繊維が多いですが、柔らかくゆでればつぶしやすいので是非使ってみてくださいね!
乾いた咳が出るときやお腹の調子が悪い時にも活用できます。②梨
呼吸器のトラブルやお肌の乾燥など秋から冬にかけて出やすいトラブルの解消におすすめのフルーツです。
生で食べるとザラッとした食感がありますが、ゆでるとプルっとした食感にかわります。
お湯にすりおろした梨を加えて煮るだけで甘い梨のスープになりますが口当たりが気になる時は水溶き葛粉や水溶き片栗粉でとろみをつけると食べやすくなります。
梨が手に入らない時にはリンゴで代用してくださいね。③かぼちゃ
かぼちゃは瓜類の中では珍しく、身体を温めてエネルギーチャージしてくれる食材です。
秋に旬を迎えしっかりゆでるだけでトロっとした食感になるのでとても調理が楽!
彩りもきれいで淡白になりがちな離乳食初期の食卓に華を添えてくれます。
りんごやさつまいもなどと合わせるとスイーツ風にもなりますし、玉ねぎと合わせるとやさしいかぼちゃのポタージュになりますよ! -
冬(12~2月)に離乳食を開始する場合
冬は寒い季節。木は葉をおとしてじっと春になるのを待っていて、クマやカエルは冬眠しますよね。自然界では動きを止めてエネルギーを外に出さないシーズンと考えます。
人間は冬眠はしませんが、やっぱり寒いと動きが鈍くなりますよね。
そんな冬は体を温めて、エネルギーを蓄える効果を持つ食材をチョイスします。①さつまいも
芋類の中で、身体の成長発育に携わる「腎」という部分にアプローチできるお野菜です。
甘味があって子供の好む味でもあるためとても重宝します。
最近はかなりの品種が出回り、どんどん甘さがUPしていますが、赤ちゃんが強い甘みに慣れるのを避けたいため、糖度がそれほど高くない、あっさりしたものを選ぶのがおススメです。②たまねぎ
玉ねぎは体をあたためて血液をサラサラにして体の余分なものを出してくれる効能を持ちます。
しっかり火にかけると甘みが増すうえに、トロトロでなくなってしまうくらい柔らかくなるので離乳食初期に使いやすい食材ですね。
子供の嫌いな野菜で必ずランクインする野菜ですが、先入観のない離乳食初期はなんの躊躇もなく食べてくれる・・・ハズです!!
ゆで汁もおいしいエキスが出てくるので、すこしスープに風味を加えたり、具材を水分で伸ばしたい時にも重宝しますよ。③ほうれん草
ほうれん草は鉄分が豊富で貧血対策(ママにもおすすめですね!)にもなりますし、血を補う効果が潤いUPにもつながるので、冬の乾燥対策にも使えます。
オールシーズン出回る野菜ですが、旬は冬。
冬のほうれん草は柔らかくて甘みがあります。
せっかく冬から離乳食を開始するのならぜひほうれん草もチョイスしていただきたいです!
まとめ
ここまでをまとめてみましょう。
★赤ちゃんが好む「甘味」が自然に含まれていること
★手間のかかる裏ごしやすりおろしのストレスが少しでも少ないもの
★赤ちゃんの消化吸収能力をサポートしてくれる効能を持つ食材と、旬のトラブルを解決できる効能を持つ食材をうまく組み合わせる
これを頭に入れながら、赤ちゃんの食生活を豊かにするべく、楽しみながら離乳食を進めてみてくださいね!
初めの一歩は人参ですよ!(笑)これはぜひあなたもやってみてください!
・・・あ、慣れたらキャベツも試してくださいね!(笑)
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